ビジネスにおける分析は、意思決定に役立たなければ意味がない

職業柄、よく「分析ってなんだろう?」とか「分析ってなぜ必要?」とかをよく考えます。今回は私なりの考え方をご紹介できればと思います。

前提としてですが、分析という言葉は一般的にもよく使いますし、結構意味のレンジも広範だったりします。今回は、ビジネスにおける分析、ということで一般の文脈とは少し異なることをご注意ください。

分析の目的は「意思決定のための示唆導出」

突然ですが、分析ってなんでしょうか?

  • データベースからデータを出すことでしょうか?
  • 詳細がわかるように深掘ることでしょうか?
  • わかりやすいグラフを作ることでしょうか?

これらは分析の過程で必要であったり役立つ要素かもしれませんが、本質ではないと思います。

分析の目的ってなんでしょうか?

私は、「意思決定をサポートする」もしくは「そのための示唆を得る」ことだと考えます。

長時間かけて分析をしたあと、細かい内容を上司に説明した結果、「だから何?」と言われてしまうことがよくありました。これは典型的に意思決定になんの影響も与えられないパターンです。対象の解像度が上がること自体は良いことなんですが、目的から外れていて、まったくもって分析と呼ぶに値しないです。

ちなみに、

分析の目的はアクションにつなげること!アクションにつながらない分析に意味はない!

というご意見もよく聞きます。私の立場はこれに近いですが、私は必ずしもアクションにつながらなくとも分析の価値はあると思います。なぜなら、分析の結果、「仮説は違っていた」「アクションはとらないほうが良い」という結論となる可能性があります。仮説は正しいと結論づけることが価値なのではなく、正しくないことがわかってもそれは意思決定上有益なはずです。示唆の結果、アクションを取らないほうが良い、とう意思決定をとることも同様に有益です。ですので、細かいですがポイントはアクションの有無というよりは意思決定への影響度だと考えます。

これって分析ですか?

もう少し具体的に分析について考えてみたいと思います。

分析っぽいけど、分析ではないものについていくつか考えてみます。

今月のキャンペーンについて分析しました。売上は100万円でした。

これはデータを抽出したにすぎないですね。もちろん意思決定に使えるレベルの示唆はありません。キャンペーンが良い成果だったのかすら、これだけではわかりません。よって、これは分析とは言えないと思います。

自社サイトの分析をしました。40代男性のユーザーが40%と最も多いです。

これもデータ抽出にすぎません。現状把握のための情報として価値がないことはないですが、これをもってなにか意思決定をするのは難しいと思います。強いて言うなら、「最も多いという40代男性が好みそうなコンテンツを今後準備する」といった意思決定をサポートすることはできるかもしれません。

分析とは比較である

ポイントは「意思決定に役立つか」であることがおわかりいただけたと思います。

目的がそうだったとして、ではどうすれば意思決定に役立つ示唆を得ることができるのでしょうか?

私がかつて先輩からいただいた言葉があり、これがすごく本質的だと思っています。

分析とは比較である

つまり、比較によってでしか、示唆は得られないということです。

例えば、「この料理は100リンギットです」と言われたとして、何か示唆なり情報なりは得られるでしょうか?

「リンギットって何?単位?」といった感想かと思います。(ちなみに、リンギットはマレーシアの通貨で、1リンギットが30円前後です)

次に、「この料理は100リンギットです。水は3リンギットです」と比較対象が与えられていればどうでしょうか?

「水の33倍くらいの価値のある料理なんだ」「日本で言うと3,000円くらいのものかな?」「今手持ちで払えるくらいだから試してみようか?」といったことが考えられるようになります。これらは先ほどと比べても格段に多くの示唆を含んでいて、意思決定にも役立つことがわかると思います。

まとめると、分析の際には比較をすることが重要で、比較のない分析は分析と言えないと考えます。実務上も、分析のアウトプットの際に、「何と比較した数値なのか」「何と比較してそう言えるのか」は厳しく確認する必要があります。

まとめ

ここまでをまとめると、

分析とは、意思決定のために比較から示唆を得ること

という風に私は今のところ定義しています。

これらはあくまで、私のこれまでの分析実務の経験から抽象化してまとめたものですし、今後この考え方に変化があることも当然あり得ると思います。当然違う考え方の人もいらっしゃるかと思います。

一方で、これまでの分析実務の中で、数多くのうまくいかなかった分析、カウンターパートに納得してもらえなかった経験を元にしています。もし今後、仕事として分析をされる方にとって、

  • 分析の本質からそれた方向に進みそうになった時
  • 分析に行き詰った時

などの参考になれば良いなと思う次第でございます。

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